所得税のこと 第1話
あなたの会社の総務は、社員の煩雑な給与計算に忙殺されていないでしょうか。
今後もそういった心配から無縁でいられるでしょうか。
社員が管理職、一般社員、パートなど雇用条件が細分されている都合上、もちろん社会保険料や所得源 泉徴収税額も異なってきます。社員が増え給与体系が多様化し計算が難しくなったとしても、例えば所 得税の源泉徴収分は給与支払いの翌月10日に遅滞なく納税しなければなりません。1日でも間に合わなかった 場合ペナルティとして10%の不納付加算税を科せられることもある、優先順位の高い業務項目です。
我が国所得税の税額12兆6140億円[2010(平成22)年度当初予算]のうち源泉徴収額は10兆1540億円(同)と、 80.5%に達します(『日本の統計』2011、総務省統計局)。これは租税等収入の総額41.5兆円(2010年度、 決算額)と比較しても24.3%にあたります。
極論すれば、我が国の国家予算徴収のおよそ4分の1は全国津々浦々の会社総務のみなさんが担っているともいえます。 いわば税務署の仕事を肩代わりさせられているのに、これだけ急かされて納税しなければならないとなれば、 時に会社の給与計算がもっと簡単だったらと思うこともあるでしょう。
例えば会社が理想的な労働環境で、現場に早出も残業も休日出勤も出張も一切なく、単一の賃金体系で 就業する正社員が均等な年齢分布で在籍しているとします。
この会社の給与計算は残業手当や有給休暇の振替等一切の例外もなく、社員全員が単一の給与体系を適用すれば いいので総務の煩雑さも多少和らぐでしょう。もし社長から新入社員まで同じ社宅に住みすべての社員が 一律同額の給与であったなら、給与に関する業務だけは相当簡単になるかもしれませんね。
実際そうはいかず、雇用の流動化や定年延長を控え、今後さらに雇用形態・給与体系が多様化することは明らかです。
高い能力を持つ即戦力の中途採用が増えれば、その社員たちのために新たな会社の雇用方針を作っておくほうが得策でしょう。 また、家庭を持つ女性の社会参加を促進するため、会社は例えば短時間の労働でも無理のないよう各個別の事情に配慮した雇用、 給与の条件を認める必要が出てきます。一時期ほどの勢いがなくなったものの、今後再び能力に応じた給与制度を採用する会社もあるでしょう。 従来型の年功序列制と併用する場合があれば、会社には個々の社員に合致した多様で詳細な給与体系が要求されます。
また2004(平成16)年12月以降、「高年齢者雇用安定法」が順次改定施行され、会社は希望する社員がいる場合 (1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止をする等の改善策を施し、2013(平成25) 年4月からはいずれかの方法で65歳まで継続して雇用しなければならなくなりました。
現状では会社の人件費総額を大きく変えないために、違う賃金体系のもとで再雇用契約を結ぶのが一般的です。 場合によっては会社の退職金制度を見直したり、定年延長制度に伴う助成金を申請したりする必要も出てきます。
これらの条件すべてに配慮して、会社の総務は毎月所得税を計算し、給与から源泉徴収を行った上で納税をしなければならなのです。 納付税額が多かった場合は申請をすれば還付されますが、不足していた場合もやはり延滞による不納付加算税の対象となる可能性があります。
会社の給与体系が単純化できない以上、柔軟で工夫の行き届いた効率ある業務管理システムを模索することはとても有益なことなことでしょう。
ところでこの源泉徴収制度ですが、日本のサラリーマン(最近ではサラリードワーカーという呼び方も使うそうです)の所得税納付方法として一般的です。
ではそんな所得税の納税方法「源泉徴収制度」についてみてゆきましょう。
続く>>所得税のこと part2